部屋を見渡してみますが、べつになにも、変わってはいないし、時々ここが、どこなのかわからなくもなりますが、寝て起きて、きのうの続きを今日はじめるだけです、部屋のなかにはぼくがいて、きみもいて、たぶん明日も、ぼくときみがいることだろう、ずっと先のことはわからないけれど、明日のことはなんとなく、わかるような気もするから安心して、また眠る。
思い出は窓の外にはないし、この心のなかをあけてみても、なんにも音がしなかった、それでも勝手に涙はこぼれたのだから。だからぼくは、生きていて、きみは、生きていて、手と手が繋がるこの温度のことを、思い出と呼ぶあそび。あそぶように、生きることしかできないぼくたちが、いちばんしあわせだったと思う。
ぼくにもおなじ、夕やけが見えたから、もうすぐ夜がやってくる。ここから一歩も動かなくても、太陽のほうが動いてくれるのは、今にはじまった話ではないし、だんだん夜空がひらけて、ひらけて、咲いたのは白い月でした。部屋のなかから写真を撮ろうと、カメラを向けるけれど、ちいさくてちいさくて消えてしまったから、また明日。明日はなにをしましょうか。
文:山本こう太 絵:kaori