こう太のコーヒーとか

73 ヒビ

暖房のよくきいた部屋の空気があたたかくて、ポトスの葉がいつもより緑にはえている。
コーヒーを淹れて、きのうの出来事をおもいかえす午後。
さみしい気持ちになることはもうほとんどないけれど、コーヒーの酸味がいつもより気になって、ひとり、もしかするとぼくも泣いていたかもしれない、目線が空をゆく、とおいとおい空、どこまでも。

ひといきつくたびに、またこの場所にもどってこれますように、といつのまにか祈るようになった。 さがさなくても大丈夫なように。
ふくらんでゆく香りは、コーヒーのもので、どうしようもないことのぜんぶがこうして日々と呼ばれるのだから、たぶんまちがいは存在しないのだろう。
安心は、いつのまにか不安にかわるかもしれない、ぼくは植物に水をやるとき、ていねいだった。
命がなんなのか、考えたくもなかったのに、答えがそこらじゅうに散らかっている、それもまた日々でした。

73 ヒビ うつくしいものをできるだけ見ていたいとおもった。
だれだって本物で、ぼくだってどうせ、本物なんだろう。

文と絵 山本こう太

×
sp
美味しさのヒミツ
sp
自家焙煎.com耳寄り情報
>