こう太のコーヒーとか

93 大事な朝

朝の陽のなかで、コーヒーをのんだら、記憶と香りがむすびついてしまって、カレンダーを見るけれど、ちゃんと6月。
信じている未来が、きてもこなくても、笑っていられたらいいなあと思う。
コーヒーをのんで、見上げたふりをする。遠くの街にもひとがいて、きっと、ひとびともコーヒーをのんでいるに違いない。
時間も空間も、ひとときの朝の陽のなかで、もえるように、やわらかい。

朝はなるべく、しずかに過ごしていたい。
だって、ぼくはたぶんまだ寝ぼけているし、ぎこちないやくだらないを愛している。
挽いた豆の香りが、部屋にこもることはなくて、吸いこむたび、だれかにおはようを告げている。
朝だよ、と君に告げる。

93 大事な朝 大事な朝。
ぼくはおとなになるけれど、そのかわりに捨てないといけないものがあるなんて、いやに決まっているし、大事なものくらい、自分で守らせてみてほしい。
明日も明後日も、自由です、ぼくたち。
朝陽に照らされるんじゃなくて自分が、光ってもいい、暗闇に、隠れてもいい。
比べたりする必要もないからまた笑って、0と1を、行き来する。
こんな大事な朝が毎日、ちゃんとやってくるのだから、ぼくは嬉しいのだ。
きょうも、コーヒーをのんでいる。

文:山本こう太 絵:kaori

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